聖地巡礼のバイク旅

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「寺社巡りツーリング」天川村からの帰り道にて



天川村への巡礼ツーリング、その続きの話をしてみたい。



栃尾観音堂


天河大弁財天社を辞した後、楽しみにしていた天の川温泉は現在改修中で長期の休業。
残念だけど仕方がない。

他の寄るべきところの情報を仕入れてきてないので、このまますんなり帰るかと思ったところ、「栃尾観音堂」の看板が目に入った。

初めて聞く名前のお堂だが、敢えて看板を備え付けてあることを考えれば、寄らない手はない。
ということでお参りさせて頂いた。

県道から天の川を渡り、さらに村の中に入って所にそのお堂はあった。
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江戸時代に円空さんという修験僧がいて、この人が彫った仏像は独特の作風で、5000体を超える木彫りの仏像を各地に残していることで有名らしい。

この栃尾観音堂には、聖観音菩薩立像、大弁財天女立像、金剛童子像、護法神像の四体仏像が祀られているが、当時、大峯山で何度も修行を重ねたことの証でもあるようだ。
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なお、円空の仏像が残されている西端がここ栃尾観音堂らしい。
芸能人も多くここを訪れている様で、お堂内には、大河俳優の滝田栄さん、人間国宝・桂米朝師匠のご子息・5代目米團治さんの色紙なども飾られてあった。
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柿の葉寿司を土産にするため、来た道を戻る

ここを辞したのが、午後3時20分ごろ。
今からすんなり帰れれば、陽が落ちるまでには帰宅できる。

山の中は既に夕方の雰囲気で、気温も下がってくるので、往路で通ったトンネルが怖くなってきた。(本当に寒かったので)
来た道を帰ることにしたのは、往路で見つけた「柿の葉寿司」屋さんでお土産を買いたかったから。

今や奈良土産の定番であり、奈良市内から吉野あたりまで広範囲に帰るが、「手作り」となると限られる。
妻と娘が好きだし、値段も手ごろなのでお土産には最適だ。
柿の葉寿司


あの寒くて長くて暗いトンネルを越え、行く途中で寄った道の駅も越え、麓の下市に差し掛かったところで、「丹生川上神社下社」の看板が目に入った。

そうだ、これも往路途中で看板を見つけ、帰り道に寄ってみようと思っていた神社だった。
しかし、もう午後4時に近い。



絵馬の発祥の神社

神様を詣でる際の鉄則の一つとして、午後4時くらいまでと聞いたことがある。
それを忠実に守ってきたし、「礼儀を知らぬ奴」と思われるのも癪だし、でもちょっと寄ってみたいと迷う暇もなく、ハンドルを切っていた。
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後で知ったことだが、鳥居は修復中でテントが被さっていたので危うく通り過ぎるところだったが、白馬と黒毛馬とが目に入り、その奥に社殿らしく物があったので、「ここだ」と分かった。

 

丹生川上神社下社

境内は質素という言葉がぴったりで、華美な感じは全くしない。

考えてみれば、丹生都比売神社(紀伊国一之宮)は知っていても、丹生川上神社なんて聞いたことなかったし、下社となると摂社のような存在で、したがって質素なんだろうと勝手に考えていた。

これは大きな間違いで、そもそも丹生川上神社は官幣大社に列せられた格の高い神社だという事が分かった。
室町時代の応仁の乱の余波で逼塞したらしいが、その後、再興がなされた際、元の場所が正確に分からなかったため、現在の上社、中社とともに伝承のある3つの地に鎮座された一社とのこと。



水の神様

ご祭神は「闇龗神 (くらおかみのかみ)」で、水の神様の代表的存在の神様。
大峯山から流れでる霊水を守護する神様ということであろうか。

この丹生川上神社下社の傍を流れる丹生川は吉野川(紀ノ川)に繋がり、大阪湾に流れ出る。
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同じく大峯山から流れる洞川・天の川は、十津川に至り、やがて熊野に繋がることは既に書いた。
つまり近畿地方の南部はこのあたりの水源により生活の基盤が守られてきたのだと考えると、やはり格の高い神社であることは頷ける。

しかし、現在の宮司さんのご意向で神社の宣伝などは一切していないそうだ。
ホームページも存在しない。
言わば地元の氏子の皆さんと、口コミで集まり崇敬している一部のファンによって支えられていることになる。




75段の階段の上にある本殿

ところで、普通に拝殿前で参拝を済ませ、御朱印を頂戴しようと社務所に立ち寄ったら、関係者らしき人が同じく参拝に来たカップルに何やら説明をしている。

社務所にはこの方しかいなかったので、御朱印を頂くために話を聞きながら待っているとその方が「せっかく来てくれたのだから階段の下まで案内しましょう」と言って下さった。

何の事か分からずに、しかし急ぐ帰路でもないのでノコノコ付いて行くと先ほどの拝殿に上がらせてくださった。
この段階で参拝者は僕を含めて8名。大阪市内からカップルの2名、岸和田市から同じく2名、愛知県から女性ばかり3名、そして私である。

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一人づつという事で拝殿奥にある座布団に座り、目の前にある階上を見上げてみると、そこにはひたすら長く続く階段があり、その先にご本殿の扉が見えた。
「階段の下」というのは、この事だったのか。

後で調べたら、階段は75段あり、その高さは20メートル以上に及ぶそうだ。
(残念だが、畏れ多いので写真は撮っていない)

拝殿から本殿をジロジロと見ることも畏れ多いと思っていたからこのような機会は本当に貴重である。
そして、我々の生活に欠かすことが出来ない水の神様の前で感謝の気持ちを表すことが出来たことは、有り難い以外の何物でもない。



「言挙げ」の意味

その後、その関係者の方のご講和を拝聴する機会も得た。
日本に神様は何柱いらっしゃるか、外国人が日本の宗教を研究するのはなぜか、神社の歴史とは等々、色々な話を伺ったが、最も印象に残ったのは「言挙げせず」の話だった。

 

「かけまくも畏き」で始まり、「かしこみかしこみ申す」で終わる祝詞は、なぜこんなことを言うのかという例示から「言挙げ」の話になった。

「言挙げ」とは言葉に出すという意味。
しかし、宮司さんが言いたいのは、「言挙げせず」。つまり言葉に出ささないということ。

「敢えて理屈立てて物事を決めつけようとせず、相手の気持ちを汲みながら心の中でそれを理解し、それを受け入れることが大切なのだ」というように聞こえた。

我が国では八百万(やおよろず)と言われるくらい多数の神様がいらっしゃって、その傍らで仏教も信仰している。無論、西洋や中東からもたくさんの宗教が入り込んで、しかし、お互いに喧嘩することなく(多少はあるが戦争にはならない)共存している。

それが我々日本人の精神的特徴であって、これは現代の一つのテーマである「多様性の尊重」にも繋がる大変重要な問題提起のようにも感じた。

たった15分程度の事だったが、「他人に惹かれる」とはまさにこの事だ。
またこの方にお目にかかりたくなった。それも無性に。
 


それは丹生川上神社下社の宮司さんだった

帰って調べてみたら、この方は宮司の皆見元久さんだった。
関西の有名神社を経て、7年前にこの丹生川上神社に奉職された。

 ▼帰宅してから本を出版されていることを知り購入した
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本「心の荷物を下ろす場所」を出版したり各地で講演なども行っておられるよう。
なるほどって感じだった。

話を聞かせて頂いて辞する際、「御下がり」ということで「丹生の風」というミネラルウォーターを下さった。
「気持ちよく飲んでくださることで神様もお喜びになる」と仰ったので、帰宅してから妻と半分づつして飲んだ。
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偶然に近い形で寄ったこの神社。

しかし、素晴らしい出会いに恵まれた。これは神様が授けてくださったご縁と呼ばずしてなんという。
こんなサプライズが待っていたとは。




まだまだ続くサプライズ

ところで我が家は地元の氏神様から50mも離れていない距離にある。
子どもの頃はここで遊んで、当時の宮司さんにしょっちゅう叱られていた神社だが、今は、出張で留守にするとき以外は毎日手を合わせに行く。

僕は神社の奉納行事である「だんじり曳行」の役員もしている関係で、現在の宮司さんとは仲良くさせてもらっている。一緒に飲むことも多い。

マジェスティを買ったとき、安全運転祈願をしてくれたのもこの宮司さんだった。

今回、天河大弁財天社へ出発する前も神社を参拝したが、その際に彼(宮司)から「11月に行われる禊行事について、一緒に参加しませんか」と案内をしてくれた。

彼が幹事を務める行事らしいが、その時はパンフレットだけもらって中身は読まないままに天川村へ出発した。
サプライズはここからである。

帰宅してすぐに彼からもらったパンフレットを見て絶句した。

彼が企画し幹事を務める禊行事のパンフレットに挟み込んであった何かの雑誌記事のコピーに、今お目にかかってきた皆見宮司の事が書いてある。
彼(氏神様の宮司)が僕を誘ってくれた禊行事の場所が、この丹生川上神社だったのだ。

これはもはや偶然では決してない。

神様が結んで下さったご縁以外にどう説明するのだろう。
これこそ「言挙げ」で理論や理屈で語れるものではないはずだ。
 



本当に天川村に来てよかった。
なお、丹生川上神社には上社、中社もある。
改めて下社を含めてこの三社を詣でたい。

そして、天川村には龍泉寺という八大竜王を祀るお寺もある。
このお寺も前から行ってみたかったところ。

僕は完全に吉野から天川村辺りに魅せられてしまった。




(おわり)最後まで読んで頂き有難うございました
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