聖地巡礼のバイク旅

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「寺社巡りツーリング」西国札所 播州清水寺・花山院・中山寺(後編)



(中編から続く)

「今日中に中山寺に参拝できるかな…」

花山院菩提寺を辞したのが午後3時半ごろ。ここから次の目的地・中山寺までは約30㎞で1時間の行程。
お寺の参拝は夜でもできるかもしれないが、御朱印を頂ける時間はたいていが午後5時までとなっているので、上手く行けてもギリギリかもしれない。

西国三十三カ所の札所はどこも駐車場から本堂までが遠い。今日の播州清水寺もそうだった。なので、到着してからも時間がかかる可能性が高い。

中山寺には23年前に行った(※後述)けど、どんな所だったかは全く記憶が無いので、本堂に辿り着けるまで5~10分程度はかかるとみておいた方が良いとも思う。

しかし、そもそも駆け込みセーフなんて巡礼とは言えない。本堂の前でお灯明や線香を手向け、ゆっくり読経しなければ自身の満足感が無い。

そんなことを考えながら、「中山寺がある宝塚は自宅への帰路上にあるので、ゆっくり参拝できそうなら寄ることにして、無理そうなら今日は諦めて出直せばいい」と自分に言い聞かせながらアクセルを捻ることにした。





「どの道を通って宝塚へ行くか」

尼寺(花山院菩提寺のある場所)から中山寺までのルートは、①高速道路 ②国道176号線(通称イナロク) ③県道の三つがある。
自分なりの評価は、

①早いだろうが遠回りになる。また西宮北から宝塚までは渋滞の名所。もし渋滞ならいくらバイクでもスムーズには走れない。
②イナロクは現実的なルートだが、これも遠回りだし生瀬あたり武庫川を渡る手前は混む可能性がある。
③走ったことないので到着までのルートのイメージが沸かない。しかし信号は少なそうだ。

宝塚


など考えながら、あとはYahooカーナビに選択を委ねることにした。結果、彼(!)が選んだのは③だった。
ならば、あとは彼に従うだけ。

結果、これが正解だった。

 

ただ、大失敗が一つ。この道中もアクションカメラを回したのだが、結果、全く取れていなかった。故障なのか操作或いは設定ミスなのか、その理由は今となっては分からない。

なので、途中の風景をお伝えすることはできないが、走りやすく景色も美しかった。まさにバイクで走って楽しいと思える道だった。

湖(だと思っていたが、後で調べると貯水池だった)を横に見ながら、いくつかのゴルフ場の横を通り、峡谷の大きな橋を渡り辿り着いたのが中山五月台。

関西なのに、冬になって気温が下がるとスタッドレスなしでは走れなくなる事で有名な高級住宅地。

ここから急な坂を下ると中山寺の背面に出てくる。Yahooカーナビの指示通り走ってきて、やっぱり予想通り午後4時半に山門前に着いた。

山門2





「23年ぶりの中山寺」

 

私が中山寺という存在を知ったのはもう数十年前の事。とはいえ、関西で「中山さん」と言えば、安産守護のお寺としては超有名な存在で、私も何となく「安産は中山さん」という認識があっただけだが。

しかし、平成5年に妻が第一子(長女)を身籠り、その事がきっかけとなってこの中山さんに安産祈願の帯を頂きに来たことはしっかり覚えている。但し、覚えているのは来たことだけで、どんな境内だったかは全く記憶にない。

 

そもそも中山寺が安産守護のお寺として信仰を集めたのはかなりの昔かららしい。豊臣秀頼誕生の際も父・秀吉が熱心に祈願したと伝わるが、特にここが有名になったのは明治時代に遡る。

まだ御所が京都にあった時代、孝明天皇の子を身籠った女御が安産祈願の為にこの中山寺に祈願し、その後、無事に生まれた皇子は明治天皇として即位されたことでこの寺が一躍有名になったとの事。

 

その故事にあやかり、安産祈願を求めて全国からこの中山寺を詣でる人は絶えないという。

我が家も例外ではなく、参詣し安産を祈願したという話だが、お陰様で妻は長女もその後に生まれた長男も比較的安産だったよう。ありがたいことだ。




「近代的に生まれ変わった中山寺」

さて到着したものの山門前の道は狭く、住宅地でもあるのでバイクを停める場所はない。

あれこれ考える時間がもったいないので、山門隣にある私営の駐車場に止めることにした。料金は500円。全く許容範囲なのでここに止めさせてもらうことにした。
そもそも中山寺では拝観料は徴収されないので、バイク駐車料金を拝観料代わりだと思えば高くない。

山門は大きく立派な造りで圧倒される。西国札所の中でもトップクラスのように思う。
山門1

山門から本堂までの参道も綺麗に整備されている。またその途中に普賢菩薩、弥勒菩薩、お地蔵さん等のいくつものお堂があって、これもどれも新しい建物に見える。

参道


本堂に近づくと、信じられない看板が目に飛び込んできた。
「エスカレーター!」
エレベーター1

エレベーター3

後で聞いた話だが、安産守護のお寺が参詣に訪れる妊婦さんたちにしんどい思いをさせるわけにはいかないという配慮で、本堂がある段上へのエスカレーター設置を決めたのだそう。

個人的には、妊婦さんだけじゃなく、足腰が弱った年配の方や障がいをお持ちの方に対するバリアフリーという考え方に合致するし、伝統を大切にすることも大事だけど現代に即した良い施設だと評価したい。





「多くの信仰を集める中山寺」

私は西国三十三カ所の24番札所としての中山寺を参拝させて頂いたのだが、先述した通り境内には多くのお堂がある。

しかも、現在、五重塔の建立の途中でもある。(修理ではなく、新建築の場面を初めて見た)五重塔


これらのお堂は様々な札所として多くの信仰を集めている。

本堂(十一面観音)は西国三十三カ所の24番札所であり、摂津国三十三カ所の第一番札所でもある。
本堂

その他、弘法大師を祀る大師堂は摂津国八十八カ所の第69番札所であったり、護摩堂は近畿三十六不動尊霊場第21番霊場であったり。
さらに阪急沿線・西国七福神の寿老神を祀るお堂もある。
(他にもまだまだあるらしいが、これくらいにしておきます)




「阪神大震災による被災を乗り越えて」

無事に本堂前での読経を終え、また御朱印も頂戴したのは午後5時前で参詣客もまばらであった。
何にしても、この日の内に参拝を終えることが出来て良かったと安堵。

しかし、ゆっくり見て回りたかったお堂は全て閉門。これは残念。出直すしかない。

駐車場に戻った際、店番のご婦人と話をしたのだが、私が「23年前に一度来たのだが、その時の記憶が全くない。本堂はともかく、周囲のお堂が綺麗だし、エスカレーターには驚いた」旨の話をすると、「あなた(つまり私)が来たのは、阪神大震災の前だろうから、当時と今では景色がかなり違う」と言われた。

そうだったんだ。阪神大震災は神戸市街の被害がクローズアップされがちだが、宝塚も大きな被害がった場所だ。
宝塚市安倉に住む友人が壊滅的だと嘆いていたことを思い出す。

中山寺も例外ではなく、多くの伽藍・お堂が倒れ、境内は無茶苦茶だったんだろう。
だから参道が綺麗に整備され、新たにお堂が建ったり、エスカレーターが設置されたりしてるんだ。

ただ、山門や本堂が無事だったと聞いて驚いた。改めて昔の建築技術の凄さを思い知ることにもなった。




「帰り間際のサプライズ」

そんな話を聞いて、それなりに感動して帰ろうとした時、同じ駐車場に車を停めていた男性に声をかけられた。

聞くと、この日の播州清水寺から花山院菩提寺、そしてこの中山寺までご一緒していたらしい。こっちはバイクなので、この男性からすると目立った存在だったらしい。

四国遍路の時には順打ちだったので、朝から晩まで境内で一緒になるお遍路さんもいたけど、西国の巡礼では珍しいのではと思う。

三重の津からいらした方だったが、ご縁を感じずにいられない。

「お疲れ様でした。気を付けて」とした言葉を交わさなかったが、これも観音様が下さったご縁だろう。次回どこかでお目にかかることがあればいいなと思う。


(終わり)
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