2日目の朝は勤行から始まった
昨夜は午後10時半に床に入った。報道ステーションの放送中に寝るなんて、酔っ払ってる時以外では人生初だと思う。
早く寝れば自然とその分早く起きることになる。
だって、6時間以上もトイレを我慢できるわけがない。老眼の進行といい、10年前と今とでは、体の構造が変わったみたい。
結局、目が覚めたのはアラームに頼ることなく午前5時。当然、窓の外はまだ暗い。
こういう言い方は失礼だが田舎なので真っ暗に近い。
その分、昨夜は窓越しに綺麗な星も見えたのだが。
勤行は6時から本堂で行われると聞いていたが宿坊は薬王寺のすぐ隣にある。
本堂まではいくらゆっくり行っても5分はかからない。したがって、今から45分はゆっくりできるが、二度寝をしてしまうのが怖い。
そこで持参したコーヒーを淹れてみる。少し肌寒い中でのあったかいコーヒーが眠気を一気に覚ましてくれた。
10分前には本堂に入っておこうと思い部屋を出た。まだまだ周囲は暗いが境内はいたるところがライトアップされているので歩きやすい。
しかし、この薬王寺も本堂は階上にあるので白い息をハアハア吐きながら石段を登っていく。段数は多くないのだが角度が急であり、一段の高さが高いので股関節への負担が大きい。
何とか本堂の前に辿り着くとすでに準備が始まっていて、お遍路さんの衣装を着た人影が複数見える。恐る恐るお堂内に入るとさすがに幻想な雰囲気であり、程なくして僧侶の方のお経が始まる。
そしてお堂奥に安置されている御本尊である厄除薬師如来の前では護摩炊きも行われている。
15分ほどお経が続いた後、焼香をさせて頂き、最後に全員で般若心経を唱えて朝の勤行が終了となる。全体で30分くらい。
宿坊に泊まることのメリットって色々あると思うが、本堂の中に入り御本尊に静かに向き合えることは滅多にできないことだし、まだ夜明け前の時間帯はやはり荘厳な雰囲気がある。
そして、お坊さんの説法も聞くことができる。この勤行参加は本当に得難い経験となった。
朝食の後、改めて境内に行きお遍路さんに戻る
宿坊に戻ったのが午前6時40分くらい。笈摺を脱いで食堂に行くと味噌汁のいい香りと共に朝食膳が運ばれてくる。起床からすでに2時間近く経っておりお腹もペコペコ。
華美ではないが温かさを感じる朝食を美味しく戴いて部屋に戻り、改めて一人のお遍路さんとして薬王寺に向かう。
そして今日二回目となる急な石段を登って本堂の前に立つ。この時点では僕一人だったのでゆっくりと静かにお経を唱えることができた。
すでに太陽は高く登っており爽やかな陽射しが境内に降り注いでいる。
そして続いて大師堂でも同様にお経を唱え御朱印を頂いて宿坊の部屋に戻ったのはもう8時前だった。
僕の部屋は宿坊の3階だったが僕の部屋以外のドアは開いていてすでに人影がない。
皆さん、もうすでに出発したんだ!
こうなると取り残された感があり若干焦ったが、決して急ぐ旅にしてはならない。バイク乗りにとって焦りは事故につながる。
そんなことを思いながら、せっせと出発の準備を整え、チェックアウトしたのは8時20分だった。
次に向かうのは四国別格4番の「鯖大師本坊」
お世話になった薬王寺の山門前で愛車の記念撮影を行い、給油も済ませて再開二日目のお遍路旅に出る。
この日、まず目指すのは鯖瀬市にある八坂寺、通称は鯖大師本坊。
鯖大師なんて珍しい名前が付いているが、その意味合いの説明は当寺のホームページなどに委ねることとして、ここでは「四国霊場 別格札所」について触れてみたい。
四国遍路の対象となる寺院は、霊山寺から大窪寺までの八十八箇所だが、これ以外にも弘法大師に縁の深い寺院として二十箇所が存在する。
この二十箇所が四国遍路の別格の霊場として創設されている。そもそもの八十八箇所と別格の二十箇所を足すと人間の煩悩の数である108になる。
この煩悩を滅するという意味合いもあり、別格札所二十箇所を回るお遍路さんも多いという。
さて、僕には108もの煩悩はないと断言したいところだが、やはりそうも言い切れない。
そんなことより、一人のお遍路さんとして少しでもお大師さんの遺徳に触れたいという気持ちは抑えきれない。
そんな理由で、今回の八十八箇所遍路に別格の二十箇所を加えて回ることにした。そして既に1~3番札所は終えているので、次の4番である鯖大師本坊を目指すことにしたが、ここは薬王寺の次の札所である24番・最御崎寺(室戸岬)に行く途中にある。
別格の札所は、八十八箇所と比較して参拝する人は極端に少ない。その分、ゆっくり読経できるので行く側からすると有難いのだけど。
それに、別格二十箇所では各寺で数珠玉を授与していただける。男玉と女玉があり、全て集めると数珠に仕立ててもらえる。もちろん、いずれも有料だが。
※上の写真は四国別格霊場HPより引用させていただきました。
この各玉には各寺の名前が入っており、親玉にはお大師さんのお姿がある。
いつかこの世を旅立つ時に手に持っていたいとの思いで、自分と妻の分を頂いている。
これも別格札所を回る自分なりのモチベーションになっている。
さて、ここ鯖大師本坊の参拝により、阿波国(徳島県)の札所は全て終了となった。
続いて「修行の道場」と言われる土佐国(高知県)に向かうことになったが、この鯖瀬から室戸岬までの国道55号は思い出に残る素晴らしい景色だった。
次回、その走行風景をご紹介したいと思う。
(終わり)
四国遍路ツーリング 「再開の章」第3話はここまでです。
続きはすぐにアップしていきますので、引き続きよろしくお願いします。