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自販機の歴史的使命は終わったのか?「元飲料メーカー社員が読み解く自販機の未来」|【シリーズ考察・その11】

こんにちは、じゅんれいライダーです。

今回のブログは、「自動販売機の未来予想図」というテーマで述べてみたいと思います。

少しややこしい話になるかもしれませんがよろしくお願いいたします。

 
📍 今回のQuick Look
京都の街角で見つけたのは「車エビ」や「ポケカ」を売る驚きの自動販売機。
かつて飲料メーカーに勤務し、まさしく自販機の栄枯盛衰をこの目で見て、かつその変遷を研究した僕の目に、これらはどう映ったのか。
インフラとしての使命を終えつつある飲料自販機の「今」と、テクノロジーが変える「次」の姿を考察します。

 

 

 

京都で見つけた「車海老」の自販機

自販機はすでに“日用品の売り場”から“体験を売る装置”へと変わり始めている。

2026年3月15日オンエアのLike a windは、久しぶりの「珍スポ探検隊シリーズ」でした。

テーマは、「珍スポ自動販売機」というテーマで、京都にあるユニークな自販機を紹介するという内容でした。

https://youtu.be/Jl6ytR70ScU

このオンエアで、まず最初に紹介されたのは、自動車整備工場の前に置かれた「車海老」の自販機でした。

今の時代、こういった「おもしろ自販機」はもはや珍しいものではありません。

鹿児島県ツーリングの際には「和牛」の自販機を見たし、静岡県には「ウナギ」の自販機もあるようです。

かつて、Like a windでは昆虫食の自販機も紹介していましたしね。

この夜のオンエアでは、「京土産ガチャ」の自販機も紹介されていました。

なんと、価格は2,000円で、何が出てくるのかは分からないというものです。

僕は考えが古いのでしょうか、さすがに何が出てくるか分からないものに2,000円も出す勇気がないですね(笑)

改めて「自販機も様変わりしたな~」という思いと、その一方で「飲料の自販機はもうその歴史的使命を終えたよな~」という思いとが交錯し、とても感慨深くこのオンエアを観ておりました。

 

 

社会的インフラとしての自販機

かつて自販機は、24時間営業と即時性で日本の飲料流通を支えた社会インフラだった。

実は、僕はかつて(1990年~2010年)、某清涼飲料メーカーに勤めていました。

殆どの期間は、本社で企画系や管理系の仕事に従事していましたが、入社後の1年半はあの赤いトラックで製品配達の仕事を経験させてもらいました。

当時の仕事は、配達がメインではありながら、セールスマーチャンダイザーとしての仕事や、かつ自動販売機の設置拡大のための「新規開拓」も重要な職務でした。

当時(1990年頃)のコンビニ店舗数は現在の1/3以下で、かつ24時間営業が当たり前という時代でもありませんでした。
そんな中、「自販機とは24時間営業の、無人販売ができる画期的な売り場」であり、「消費者の飲料需要に応えるための社会的インフラ」だと教えられたことが今でも記憶に残ってます。
無論、自販機の設置拡大を行うことで、会社の売上も伸びるわけです。

僕が在職していた頃、自販機を介した売上は会社の根幹でした。最終的な販売経路としての売上が全体の60%を超えた時期もあり、まさに自販機こそが飲料ビジネスの「王道」だったのです。

飲料メーカーの社員であった僕にとって、自販機とは日用品や生活必需品を提供する媒体です。
しかし、この時のオンエアを観ていて思ったのは、「今や自販機は日常生活品を売る場所から、エビやポケカといった”非日常の体験”を売る場所へと変容しつつある」ということでした。

清涼飲料業界が最も成長した時代にその業界で勤めていた僕にとって、この夜のLike a windで観た光景は非常に示唆に富んでいました。

そして、「これは単なる「珍風景」ではない。飲料自販機というビジネスモデルが、一つの歴史的使命を終え、新たなフェーズへと無理やり押し出されている証左なのではないか。」

そう感じたことが、今回のブログを書くきっかけになりました。

 

 

「容器」と「チャネル」の力学

容器の進化は、飲料の販売チャネルそのものを変えてきた。

その結論に至る前に、清涼飲料における容器と販売チャネルとの関係性について述べてみます。

下のグラフを見て頂くとお分かりの通り、1980年から2000年にかけて清涼飲料の生産量(≒販売量)は急増しています。

その後、2005年あたりを境に市場は成熟化、つまり停滞状態に入りました。

その成長の立役者は、まぎれもなく「自販機」でした。

さきほど述べた通り、「24時間営業の、無人販売ができる画期的な売り場」である自販機の設置が進んだことで、売り上げに寄与したわけです。

 

少し余談ですが…

その自販機の売上が伸びた背景には、「容器の変化」がありました。

これは、僕が社会人学生として、神戸大学大学院(経営学研究科)時代に書いた修士論文のテーマなのですが、容器の変化と販売チャネルとは密接な関係にあります。

 

【容器がリターナブルの時代】

自販機が日本の街中を埋め尽くす前、1970年代から80年代前半にかけて、メーカーが最も重視していたのは「街の酒屋さんや米屋さん」でした。

なぜなら、彼らが「配達機能」と「空き瓶の回収機能」を担ってくれていたからです。

当時の飲料は「重いリターナブル瓶が主流」であったため、その販売と空き容器の回収までを担当してくれるお店が、清涼飲料の販売を支えてくれたわけです。

 

【缶やペットの出現によるチャネル変化】

しかし、容器が「ワンウェイ(軽い缶やペットボトル)」へとシフトしたことで、この力学が劇的に変わりました。容器回収の必要がなくなったことで、「どこでも売れる」ようになったのです。

並行して自販機が普及し、酒屋やパン屋の軒先だけでなく、民家の前に至るまで「置ける場所ならどこでも置く」という猛烈な設置攻勢が始まりました。

狭い場所で20種類もの飲料を販売してくれる自販機が普及したことで、製品のカテゴリーも多様化し始めました。

 

【小型ペットの出現】

1999年ごろ、500mlサイズの小型ペットボトルが市場流通し始めました。

この時、一時的にチャネルはコンビニに限られました。それは500mlペットが自販機に投入できないサイズだったからです。

その後、自販機の改良が進み、自販機でも500mlペットが売られるようになりましたが、やはりここでも容器がチャネルを決めるという現象が起きました。

 

大学院では、「清涼飲料の容器の変遷は、販売チャネルをも形成するほどの力を持ち、それは未来においても同様なのではないか」という仮説を立てて検証したのですが、それはやはり正しい帰結でした。

 

 

「フルサービス」の光と影

自販機の利益を支えたフルサービスは、同時に巨大なコストと負担を生む構造でもあった。

本題に戻ります。

自販機の普及を支えたのは、当初は「店主がメーカーや問屋から商品を仕入れて、自販機の詰め替える形態」でした。

しかし、店主の高齢化や後継者不足が進むにつれ、メーカーやベンダー側が商品の補充から金銭管理まで全てを担う「フルサービス」が主流となりました。

この変化は、メーカーにとって売り場のコントロールを可能にしました。このころ、僕が務めていた企業では、自販機は売上と利益の両面で「ドル箱」でした。

しかし、同時に過酷な肉体労働と膨大な物流コストを内部に抱え込むことでもありました。

僕も現場で痛感していましたが、一台一台を回る「商品の詰め替え」の手間と体力的な負荷は、相当なものでした。

★Check1日約250ケース(6000本)の配送が目安でした。重さにして約2トンです。
トラックに積み込む際、トラックから降ろす際、そして自販機に補充する際の3回、これらを上げ下ろしする作業はとても過酷でした。
あの時に痛めた腰は今なお、「ロングツーリング」の時に影響を及ぼしてくれます(笑)

 

そして、先般、ダイドードリンコが衝撃の発表を行いました。

同社は、2025年度の巨額赤字を受け、展開している約27万台の自販機のうち、約2万台の撤去という過去最大の構造改革を断行するというものです。

ダイドードリンコと言えば、自販機比率が極めて高い会社です。

しかし、原材料高や節約志向で「自販機一本足」モデルが限界に達し、アサヒ飲料との拠点統合や不採算拠点の売却を加速しているのだそうです。

今後は海外事業や「たらみ」などの食品事業へ経営資源を転換し、高収益な自販機への集約を図ることで、伝統的なビジネスモデルからの脱却を急いでいるとのことです。

 

 

コンビニの衝撃

この章の結論:コンビニの台頭とキャッシュレス化が、自販機の優位性を根本から奪った。

さらに、コンビニエンスストアの台頭が決定打となりました。

我が国独特の「治安の良さ」に裏打ちされた結果、自販機の独壇場だった「24時間営業」「両替機能(小銭の確保)」「非対面」という優位性は、コンビニのサービス向上や安価なPB商品、そしてキャッシュレス決済の普及によって、次第にその輝きを失っていきました。

結果、飲料自販機は近時10年で約17%縮小したというデータもあります。

近年の飲料メーカーによる自販機事業の再編ニュースなどは、まさに飲料自販機が「インフラとしての役割」を終え、単体では支えきれないコストセンターになったことを象徴しているように思えます。

 

安売り自販機はニッチな市場を狙っていますが、そもそも薄利多売の商売ですからボリュームを一定数維持しないとしんどくなるでしょうね。

参考写真

つまり、もう飲料自販機はドル箱などではなく、特に、アウトドアに設置された自販機はさらに淘汰が進むものと思います。

飲料自販機が、「飲料自販機として生き残る」ためには、高機能を備え、かつ収益性の高い設置場所(学校、オフィス内、病院など)を選ぶことが必要だと思います。

どちらにしてもそんな場所は奪い合いになることは必定です。

 

 

インバウンドと非現金決済が切り拓くニッチ

自販機は“ニッチ商材×インバウンド”という新しい市場で再び価値を発揮し始めている。

ようやくここで、今回の主題に移りたいと思います。

前章までは、清涼飲料の自販機の未来予想図を考えてみましたが、自販機そのものに未来が無いわけではないと思います。

1つは、Like a windで紹介されていた「車海老」や「ポケカ」の事例には、一つの生存戦略が隠されていると思います。

それは、コンビニでは扱いきれない「ニッチな商材」と「インバウンド需要」の掛け合わせです。

ライクアウインド➡ https://youtu.be/Jl6ytR70ScU

 

海外からの観光客にとって、屋外に自販機が並ぶ日本の風景は、それ自体が観光資源です。

言語の壁を越えて「日本の面白いもの」を買える自販機は、彼らにとって最強のエンターテインメント・ストアになり得ます。

これは実際に訪日したアメリカ人が異口同音に言うことなので間違いないと思います。

また、非現金決済の普及も決定的です。かつて高額商品を売ることは、たとえ治安の良いわが国でさえ現金盗難のリスクを伴いました。

しかし、キャッシュレスが主流になれば、数千円、数万円の商材を売るハードルは格段に下がります。

無論、中身や自販機自体の盗難には対策を施さなければなりませんが、自販機は「エンターテインメント性に満ちた24時間の無人ショールーム兼直売所」へと進化できるのではないでしょうか。

 

 

私見|DX時代の自販機の防犯対策活用

DXとドローンの組み合わせにより、自販機は“街の防犯インフラ”へと進化できる。

そしてもう1つの自販機の未来について語らせてもらい、今回のブログを終わりたいと思います。

それは、『DX時代における自販機は街の防犯を司る役割へと生まれ変わる』という趣旨での私見です。

 

かつて、自販機の新規設置の活動をしていたころ、

  • 「誰もが知っている赤い自販機を店頭に置くことはお店の広告塔になる」
  • 24時間、光を放ち続ける自販機は防犯対策にもなり、地域の皆さんに喜んでいただける」

この2つは鉄板のセールストークでした。

その時のことを思い出して、こんな発想をしてみました。

それは、『ドローンとDXとの組み合わせにより、自販機は街の防犯を司る役割へと生まれ変わる』ということです。

この考察の背景は以下の通りです。

 

【夜道が怖い】

僕には娘がおりますが、彼女の帰宅が午後9時を超える場合、妻か僕のどちらかが車で駅に迎えに行きます。

たとえ家まで徒歩5分であっても、また街灯があっても、夜道を歩くときの不安は、距離や明るさだけでは測れないようです。

 

【ドローンを活用できないか?】

そんな“感情の不安”を解消するための新しい主役として、防犯ドローンという存在を思い浮かべたわけです。

例えば、アプリを起動すると、ドローンが上空から柔らかな光で足元を照らしながら同行し、その映像は警察や警備会社と共有されるという仕組みです。

まるで空から寄り添う護衛のように、利用者を自宅まで導いてくれるのです。

 

【その真価発揮のステーション】

しかし、このドローンが真価を発揮するためには、街全体に張り巡らされた“基地(ステージ)”が必要です。

そのステージこそ、これまで飲料を売ることがミッションだった自動販売機です。

屋外に設置されている自販機には常時電源があり、今や通信回線も備えています。さらに日本の治安の良さも相まって、破壊されにくい構造になっています。

これらの条件は、ドローンの発着基地・充電ステーション・通信中継地点として理想的だと思うのです。

 

【生まれ変わる価値】

  • 駅前の自販機からドローンが飛び立ち、住宅街の自販機へ帰還する。
  • 自販機同士が街の空をつなぎ、見守りのネットワークを形成する未来が見えてくる。

飲料販売が縮小する時代にあって、自販機は“安全を支えるインフラ”へと役割を変えることは可能です。

主役はあくまで防犯ドローンですが、その基地(ステージ)として自販機が新たな価値を放つことは可能だと思います。

 

 

おわりに

よく『コンビニが街の商店(酒屋やパン屋)を駆逐した』と言われます。

しかし飲料の世界に限っていえば、その間には明確に『自販機の黄金時代』が存在しました。

かつて、酒屋や米屋から『便利さ』という武器で客を奪い取った自販機。

しかし今、その自販機自身が、より高度な利便性とコスト競争力を備えたコンビニやスーパーに、その座を奪い返されています。

まさしく栄枯盛衰。

この数十年は、まさにこの『奪い、奪われる』というダイナミックな主役交代の歴史そのものだったのです。

もう、自販機に主役の座を奪い返す力は残っていないと思いますが、役割を変えてあげることで、DXの時代における街の安心を支える仕組みとして、自販機に第二の人生を歩ませてあげることはできないかと思います。

 

飲料メーカーの元社員として、そしてかつてその変遷を論文にまとめた研究者の端くれとして、僕は、この「箱」が次にどんな驚きを見せてくれるのかを、楽しみに見守っていきたいと思っています。

 

(おわり)

 

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