聖地巡礼のバイク旅

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レッドバロンを応援したい!

ご訪問ありがとうございます。

さて先日、中古バイク販売大手の「レッドバロン(愛知県岡崎市)」がアメリカのファンド社に買収されるというニュースが流れました。

今回のブログはこの件について私見を述べてみたいと思います。

 

 

レッドバロンとは

愛知県岡崎市に本社を置くレッドバロンは、沖縄県を除く全国46都道府県に306の営業店舗ネットワークを形成している。

そして以下の数値をご覧いただくと明らかなとおり大企業である。

  • 資本金…50億円超
  • 連結売上高…889億円(2023年10月期)
  • 従業員数…2,482名(2023年11月末)

ちなみに同業他社を見てみると、「バイク王」では店舗数約80店舗、「バイク館(SOX)」で約70店舗なのでレッドバロンの店舗数の多さは際立っている。(バイク王とバイク館の店舗数は筆者調べです)

また、レッドバロンはバイクの販売だけではなく、ライダー向けのホテル・レストラン・サーキット・ライディングスクールなどの運営や、YouTubeでのツーリング情報の配信なども行っており、そういう意味では「総合的バイクサービス企業」と言うほうが的確かもしれない。

レッドバロンHPから引用

ちなみに僕は今から40年ほど前に「KAWASAKI Z250FT」を新車で、35年ほど前に「HONDA VT250F」を中古で購入したことがある。

僕がバイクを購入した当時は、まだ旧社名(旧店舗名)のヤマハオートセンターだったと記憶している。つまり大昔は僕もレッドバロンユーザーだった。

 

 

買収のステートメント

さて僕が、今回のレッドバロン買収のニュースを知ったのは日経新聞の速報だった。

そこには、このように書いてあった。

■日本経済新聞より
米投資ファンドのベインキャピタルが、中古バイク販売最大手のレッドバロン(愛知県岡崎市)を買収することが23日、分かった。レッドバロンは非上場だが国内に300店舗以上を抱え、年間売上高は900億円近い。2023年に創業者が亡くなり事業承継が大きな経営課題となっていた。ベインは創業家と協力してデジタルトランスフォーメーション(DX)投資などを進め、成長を促す。

 

その後、共同通信の記事にはもう少し詳しい内容が載っていた。

■共同通信より

米投資ファンドのベインキャピタルは24日、中古バイク販売最大手のレッドバロン(愛知県岡崎市)を買収すると発表。レッドバロンは非上場で、親会社「レッドバロンプロパティーズ」の株式の過半数を創業家などから年内に取得する。営業戦略の強化やデジタル化を支援し、中長期的な成長を促す。将来的な上場を視野に入れる。

レッドバロンは創業者の杉浦斉氏が昨年8月に死去し、事業承継が課題の一つとなっていた。創業家は引き続き一部出資を続け、現在の経営陣も続投する見通し。ベインは買収総額を明らかにしていない。

 

なお、買収元のファンド企業からはこのようなステートメントが発表されていた。

www.baincapital.co.jp

 

これらを読むと「ハゲタカファンド(経営不振に陥った企業を安値で買取り再建し、その後にその企業を売却するなどで短期間に効率よく利益を回収する投資ファンド)」による買収ではなく、創業者から次の世代に移行するにおいての変革をサポートするためのファンドの参画と読み取れる。

より良いサービスの展開を行い事業を成長させることを目的とした取り組みならば大歓迎だが、その一方で心配ごとがないわけでもない。

 

 

レッドバロンに対する私感

ここでレッドバロンのサービスについて思うところを述べてみたいと思う。あくまで主観に基づくものなので、その点はご了承ならびにお許しいただきたい。

凄いところ

これは「買った後のアフターサービス」に尽きると思う。

レッドバロンユーザーであれば全国に張り巡らされた店舗で整備が受けられる点や、ツーリングで遠隔地に出掛けた際に思わぬトラブルに見舞われてもレッドバロンのロードサービスにその場で修理してもらえたり、近くの店舗に運んで可能な限りの修理や整備が受けられるという安心感はレッドバロンにしかできないサービスだろうと思う。

実際、僕の友人は出先でバイクが故障し、同じメーカーのディーラーに修理を申し込んだものの「自店で買ったバイクではない」ことを理由に断られたと嘆いていた。

今では、バイク販売店や保険各社で様々なサービスが提供されているが、全国300店のサービス網は他にはない。

この全国津々浦々のネットワークがレッドバロンの大きな強みだと思う。

 

残念なところ

これは店舗の老朽化とDX化の遅れを指摘させて頂きたい。

【店舗の老朽化】

レッドバロンは歴史が古いのである意味仕方のないことかもしれないが、僕の知り限り店舗は外観・内装ともに古い。

下の写真は、奈良にあるバイク館(SOX)の店舗外観だが、内部も5Sが行き届いており清潔感がある。

率直に申し上げてこれらと比較すると差は歴然としていると思う。

 

【DX化の遅れ】

また、レッドバロンのDX化は遅れていると思う。そこで「在庫検索」というテーマで他社と比較してみたい。

例えば、GooBike(グーバイク)では全国の加盟店の在庫情報が一目でわかる。同様にバイク館(SOX)やバイク王のサイトでも全国の在庫が分かるので、お目当てのバイクが近くの店舗にあればすぐに見に行ける。

僕は、2016年以降に買った3台のバイクはいずれもGooBikeで検索し、実際に店舗に出向いて実物を確認の上で購入した。

一方、レッドバロンは店舗では全国の在庫が分かるようだが、インターネット検索ではそれができない。つまり「レッドバロンの店舗へ出向いて、お目当ての車両の在庫状況を確認してもらう」というシステムである。

これは「他で探したけど目当てのバイクが見つからなかった」「レッドバロン以外で買おうとは思わない」「近隣にバイク店がなくレッドバロンしか選択肢がない」などのいずれかに当てはまらない限り、そこまでして探してもらおうと思うのだろうか?

これが本音だ。

無論、「とりあえずバイクショップに行ってみて色んなバイクを見るのが楽しい」「決まった候補がないので、とりあえず色々見てみたい」というケースもあるだろうから、その点では在庫数が多いレッドバロンのようなショップは適しているのかもしれない

しかし、「ホームページで全国の在庫が検索できる仕組みがある」=「店舗に足を運びやすい」と繫がるだろうし、これは競争戦略においては必須の仕組みだと思うのは素人の考え方過ぎるだろうか。

 

今回のM&Aプロジェクトでは、「営業戦略の強化やデジタル化を支援し中長期的な成長を促す」ことを狙いとしているようなので、上記の改善を含め様々に顧客向け(潜在顧客向けを含む)サービスが向上することを期待したい。

 

 

心配なこと

さて、今回のプロジェクトを知って少し心配なことがある。

レッドバロンユーザーでない僕がこのように申し上げるのは僭越であり、発言の権利すらないことかもしれないが、ここは主張することをお許しいただきたい。

それは、レッドバロンが展開している様々なライダー向けサービスの今後がどうなるかだ。

レッドバロンの素晴らしいところは、「バイクを買った後の楽しみ方も提供する」という同社の理念と、その取り組みだと思う。

しかし、ファンドが介入するとなると、そういったコストセンターに位置づけられる事業は廃止の対象になってしまうのではないかという懸念がある。

ここで、現在のレッドバロンのライダー向けサービスの中で、絶対に廃止してほしくない「ツーリングナビ」と「カイザーベルク」について主張させていただきたい。

 

ツーリングナビ

ツーリングナビとはYouTubeを用いた動画配信のことで、全国各地のツーリングロードや観光名所、ご当地グルメなどをバイク女子タレントがナビゲートし紹介してくれるサービスだ。

北海道から九州まで全国各地の様々なの情報が満載なので、とても見やすくツーリングプラン立案の際に参考になる。

 

僕はこのツーリングナビにはかなりお世話になっていて、今までに数知れないくらいここで紹介された絶景ロードを走り、美味しいグルメを堪能してきた。

ツーリングプランを立てる時のバイブルと言っても差し支えない本当に有難いサービスだと思うので、今後もアップデートし続けて欲しいと願っている。

www.youtube.com

 

カイザーベルク

カイザーベルクとはレッドバロン会員向けのリゾート施設のことだ。

例えば関西では、琵琶湖の湖畔(近江八幡市)に「カイザーベルク びわ湖」という施設があり、美しい琵琶湖を眺めながら屋内ではカフェ&軽食を、屋外ではBBQなどを楽しめるようになっている。

カイザーベルクびわ湖

僕も一度お邪魔したことがあるが、大阪からの日帰りツーリングには持って来いの場所にあるし、春には桜が、夏には新緑が、秋には紅葉が、そして冬には対岸の比良山の冠雪が楽しめる。

www.redbaron-kaiserberg.jp

 

しょっちゅう行く場所でもないし、そもそも僕はレッドバロン会員ではないので誰かに連れて行ってもらうことになるのだが、「バイク乗りにリゾート利用の特別感を味わせくれる他にはないサービス」だ。

そんなカイザーベルクが全国に計6か所が運営されている。こういう差別化されたサービスを楽しむために、レッドバロンでバイクを買っている人も多いのではないか。

 

 

バイク版のメセナ活動

YouTubeチャンネル・ツーリングナビは純然たるサービス事業だろうし、カイザーベルクなどのライダー向けリゾート施設にしても、企業としての利潤追求の事業(プロフィットセンター)とはとても思えない。

この2つの他にも、サーキット(那須スポーツランド)やツーリングライダーのための整備工場付き宿泊施設「バイクステーション」の運営なども行っている。

これらの事業は、レッドバロンのバイク販売事業を大きく伸長させるような直接的影響はないだろうし、あっても微々たるものだと思う。

レッドバロンHPより引用

ではなぜレッドバロンはこのような事業を続けてきたのか。

それは、「バイクを買った後の、その楽しさをサポートする」という同社の崇高な理念に他ならないと思う。

つまり、ツーリングナビやカイザーベルクは、レッドバロンとしてのメセナともいえる活動なのだろう。

メセナとは「企業が主として資金を提供して文化・芸術活動を支援すること」を指すので厳密には意味合いが異なるのだろうけど、ツーリングナビやカイザーベルクもレッドバロンとしての「ライダーのサポートを続ける」「バイクの楽しさを世の中に広めたい」というレッドバロンの理念そのものを体現した活動だと考えるのが自然だと思う。

その理念こそが企業の存在意義だろうし、他の企業では絶対にできないことだろうと思う。

 

 

頑張れレッドバロン

最後にちょっと偉そうなことを申し上げることをお許しいただきたい。

僕は経営コンサルタント(の端くれ)として、企業の社会的責任とは、①社会に有益なモノやサービスの提供 ②事業の拡大による多額の納税 ③雇用創出だと思っている。

したがって企業としては利益を得て、それを上記の①~③のために再投資していくべきだ。

そうした考えで今回のレッドバロンの案件をみてみると、特に将来の上場を考えた時、コストセンターの存在は足枷になるのでは無いかと感じてしまう。

しかし、企業とは顧客や社会にベネフィットを提供するからこそ儲けることを許された存在であるという考え方もある。

『合理性を重視ながらも非合理な部分にも価値はある』

レッドバロンの新しい経営陣には、そんな風にと判断していただけることを願ってやまない。

 

最後に、レッドバロンのホームページに掲載されていた「企業理念のページ」から、特に感銘したメッセージを引用させていただく。

  1. レッドバロンは「お客様第一主義」の理念を掲げ、ライダーのサポートを続けています。その根底にあるのは「より良い二輪業界を創造し、バイクの社会性を高めたい。そして、バイクの楽しさを世の中に広めたい」という想いでした。
  2. 全国のお客様をサポートするために全国に直営の店舗網を築いています。全店直営ネットワークが可能とした自社ロードサービスは当社の象徴とも呼べるサービスとして根付きました。
  3. ツーリング施設や練習場の運営、免許取得支援など、ライダー目線の需要創造活動を行なっています。

www.redbaron.co.jp

 

この素晴らしい理念を今後も大切にしていただきたいと心から願う。

頑張れ!レッドバロン!

 

(おわり)

 

この記事の目次

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